2004年11月19日

『恋愛回遊魚』つまんない、というよりも難解

つまんない、というよりも難解な映画。話の流れを追うために画面をずっとみている必要がある。話がとぶが故に宙に足がつかないような雰囲気に仕上がっているし、ちょっとした小物やエピソードが妙に浮き出して洒落てみえたりするんで、こういうのがお好みの方にはよろしかろうが。

三十前の台湾大学医学部卒のプータローとテレビCMに出演するくらいのレズの美少女女子高生の不思議な関係なんだが、これは恋愛なのかなんなのか。よくわかんないうちに主役の男は清掃車にぶつかって倒れていて、美少女はバスにのって別れの手紙を書いている。

主役の男は妙に首が長くてだらしないん風貌なんだが、途中ブランドものの衣装で固めてあらわれるとそれなりにきまってみえるのがおかしい。演じているのは『藍色夏恋』のイー・ツーイェン監督なのだった。『藍色夏恋』メイキングにでてくる姿とは体格が完全にちがっていて、別人にしかおもえないが。音楽が極端に少ないこと、レズを自称する女子高生などは、『藍色夏恋』につながる。

なんで台湾の映像作品って映画とテレビドラマでこんなにテイストが違うのか。映画は完全にお芸術の世界にいっている。どの作品も監督や撮影のこだわり満載。画面はいつも淡くぼんやりしていて懐かしい感じ。音楽もほとんど使われない。同じお洒落系難解映画でも香港の王家衛による『恋する惑星』や『天使の涙』が大成功したのは、音楽の使い方がポップなことが理由のひとつであろうと、本作や一連の台湾映画を見ることによって思い至る。

対して『流星花園』以降のテレビドラマはわかりやすいエンターテイメントを突っ走っているらしい。画面はすっきりはっきり。映画界とテレビ界で映像関係者の行き来はないのか。日本で公開される台湾映画に偏りがあるだけなのか。どうでもいいけど、謎。


『恋愛回遊魚』
監督:ウー・ミーセン 2000年 台湾
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2004年11月18日

『藍色夏恋』清く正しく美しく

女の子二人、男の子一人の完全な三角関係である。制服姿の清く正しい青少年の恋愛が描かれる。
台湾映画らしい青春映画だ。メイキングで監督は台湾映画の重くて暗いイメージを払拭したかった、といっているが、明るい感じはあまりない。暗い、ということはないんだけど切なさが強調されて、それがどこか寂しさにつながる。淡い色彩、台北の街と海辺の街、ありがちなモチーフが印象に残る。音楽もほとんど使われず、セリフも少ない。

主役の男の子(チェン・ポーリン)、女の子(グイ・ルンメイ、リャン・シューホイ)がみずみずしくて可愛い。特に、グイ・ルンメイ(桂綸[金美])。やせっぽちでどこにでもいそうなんだけど、画面での表情がいい。ショートカットで大きな目で無愛想なのが可愛いのだ。チェン・ポーリン(陳柏霖)はどこにでもいそうな等身大の男の子が、ちょっと格好良くなった感じ。台湾で人気なのは本作を観て納得できる。

カンヌで大好評だったとのことだが、おうちでDVDとしてみるのには少々退屈。映画館でぼーっとスクリーンを眺めるにはいいのかもしれない。DVDの特典映像は、映画をスクリーンで観て気に入った人ならば見る価値あり。

主人公の彼らの年頃に観たら、また違った印象を持ったかもしれないな、と。


『藍色夏恋』(藍色大門/BLUE GATE CROSSING)
監督:イー・ツーイェン (2002年 台湾)
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2004年11月17日

『オールド・ボーイ』容赦ない韓国の映画

出来映えのよい映画だ。チェ・ミンシクの熱演ぶりは、あり得ない設定をくつがえす。背中にナイフが刺さっていようと敵をぶちのめし、戦いつづけるのだ。カン・ヘジョンも、体当たりというにふさわしい演技をみせる。場面によってメークをがらりと替える彼女は、チェ・ミンシクを慕う謎めいた女の子の不思議な雰囲気にぴたりとはまる。敵はユ・ジテ。『アタック・ザ・ガスステーション』でセリフが少ないながらも存在感があった男前は、出番が少ないながらもきちんと役をわきまえた仕事をする。
全体の構成もひとつひとつの場面も計算されている。無駄がまったくない。どうして、彼は15年も監禁されていたのか。観客は最後まで、「謎」につきあうことになる。終盤の謎解きは、すこしずつ進む。そして新たな謎が問いかけられる。人がそれほど沢山死ぬ話ではないにもかかわらず、重い。
凝った作りの映画らしい映画であり、サスペンスとしての展開も上等である。

が、あまりにも救いようがない。終映後「なんかねぇ」。というつぶやきにも似た会話がちらほらきかれた。

容赦のなさがこの映画にはある。この感覚はおなじ韓国映画の『カル』や『リベラ・メ』などと同質であり、韓国映画しかもたらせえない類のものだ。
個人的趣味とは、どうも相容れない。許容範囲外なのだ。ことばにしてしまうと、げんなりする、ということになる。もっとも平気な人、もしくはこういったものを好む人もいるかもしれない。もちろん隣の国の文化を楽しんだり応援することは当たり前、しかるべきことだ。作品に対する個人の感性の問題。

どことなくヌルい香港や台湾の映画が正直、性に合う。韓流に、いまいちのれない理由はこのあたりにあるのだろう。といいつつ部屋にイ・ビョンホン氏の写真集があるのは何故。


『オールド・ボーイ』
監督:パク・チャヌク (韓国 2004年)
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2004年11月16日

SARSに負けるな『1:99電影行動』

昨年の春、香港はSARSの流行で大きな痛手をうけた。
香港電影工作者總會が企画した、SARSに沈む香港社会を励ますことを目的にしたキャンペーンフィルム集である。本編より長いメイキングがはいっており、冒頭をエリック・ツァンによる香港電影金像賞授賞式の司会のことばが飾る。
「イラクでの戦争、レスリー・チャンの死、SARS、、世界に暗雲がたちこめた。司会は勘弁してくれ、と大会実行委員長に電話した。そんなとき、SARS感染から生還した医師が仲間の医師に協力を要請し医療現場に戻る姿があった。後戻りはできない。式典を決行します」(要約)。
社会が困難に立ち向かっているとき、それぞれが自分の仕事をやりとげることの大切さを伝えるスピーチは感動的であり、本作品集の意図を十二分に伝える。街が伝染病に見舞われるというのがどれほど大変なことか、にもかかわらず立ち向かう香港の人たちの意気込みが、この作品集から伝わってくる。

15人の監督による11編のショートフィルムがおさめられている。香港映画好きならば、あの作品を撮った人、とすぐ頭に浮かぶ監督たちである。出演者も香港映画を代表する役者が揃う。アンディ・ラウ、アーロン・クオック、ジジ・リョン、サミー・チェン、サム・リー、アンソニー・ウォン、トニー・レオン等々列記していくときりがない。それぞれわずかな時間ながらも、「がんばれ香港、SARSに負けるな」をテーマに、各監督の個性が発揮されている。

日本では、韓国映画におされて香港映画の公開本数が減ったことが報道されている。が、本作品集は、香港映画の底力を確信させる。芸術色濃い文芸映画に、カンフー・アクション映画、ラブストーリー、香港ノワール、と現在の香港映画は間口が広く、多彩なんである。
『1:99電影行動』は香港の映画でメシを食う人たちの社会貢献へのアピールであり、香港の歴史も踏まえた社会的で有意義な作品集である。このような商業色の薄い地道な作品が日本語字幕つきDVDになってレンタルで視聴できるんだから、香港映画はなんだかんだいっても日本で愛され続けているのである。


『1:99電影行動』
監督:杜[王其]峯・韋家輝・陳果・徐克・周星馳・陳可辛・馬偉豪・陳徳森・劉偉強・麥兆輝・羅啓鋭・張婉[女亭]・林超賢・謝立文(2003年 香港)
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2004年11月15日

明星ブランド論その3

お昼にうっかり、ほんとうにうっかり、ジャニーズJrの『ザ少年倶楽部』なんてのを見てしまいまして、日本が誇る巨大アイドル商会を見直した次第です。ジャニーズJr、たくさんいすぎて誰が誰やらさっぱりだったのですが。
個別に紹介されるグループの男の子たちのほかに、もっと小さい男の子たちがバックダンサーみたいに踊ってまして、おそらくこの子たちもいつの日かフロントステージで歌って踊れることを目標にしているわけで、ジャニーズ事務所、完成されたシステムです。
ジャニーズ事務所といえば北公次・フォーリーブスの時代より昔から、常に日本の芸能界に時代にあった安定した人材を供給している、芸能プロダクションなわけで、この誰が誰だかわからん状態も、客の好みが多様化した現在に沿った戦略なんでしょう。ちなみにジャニーズに関して少々ネットサーフィンしたところ、出色は芸人・松本美香氏のページ。この方、F4勉強中らしい。

そのお客には、ティーンエイジャーよりも、時間と小金をもったお姉様方が幅をきかせているようです。『ザ少年倶楽部』という番組はLIVE録画のようですが、客席には、贔屓の男の子の名前のはいったカードを持った、20代会社員(未婚)といった風情の女性が目立つ。既婚者もいるんだろうけど。

彼女たちは、ジャニーズという安定したブランドが供給する男の子たちを楽しんでいるのでしょう。ここのところ、女性アイドルにしてもモーニング娘。のハロプロだとか巨乳アイドルのイエローキャブだとか、個人もしくはグループに対して、所属事務所が前に出てきている。商品そのものよりも、事務所のブランド力で売れているように見えます。

週刊文春の冬ソナツアー潜入記によりますと、ツアー参加者は40~60代女性がほとんどとのこと。老いも若きも日本の成人女子はどうなってるんだ、と自分のこと棚にあげて思うわけですが、衣食住足りて、文化も消耗品になっているこのご時世。異性のイメージの消費は典型ではなかろうか、と。アイドル(明星)だけでなく、すべての商品において、ブランドは消耗品を生産する。消費者は経済に貢献しているわけですが。
旭君なみの貧乏根性故か、消費から新たな生産の可能性はなかろうか、と思ってみたりもする。
posted by 夏居 at 01:57| Comment(0) | 中華明星そのほか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月14日

『烈愛傷痕』はじまりました

F4迷のみなさま、『烈愛傷痕』、はじまりましたね。18歳の設定の旭が可愛い、なんてもんじゃございません。『流星花園』ではほとんどピチピチの、体格を強調する服を着てたんですが、ここではだぼだぼの高校生スタイル。これがちゃんと似合うんですわ。01年秋のドラマだから『流星花園』の直後。すっかり立派なテレビ俳優さんです。
カレン・モク(莫文蔚)姐さんがドラマにでているのを日本で見ることになるとは、『天使の涙』の頃は思わなんだ。かっちょいいです。旭くん、無茶苦茶相手役に恵まれてます。おねえさんと弟カップルの絵になってます。あと第1話では出番が少なかったけど、学ちゃんも出演。こうしてみると豪華キャストで違和感ない配役です。
中華TVドラマをみるうえで、主要な役以外の役者にあまりなじみがないことはちょっとつらい。そんななかで『流星花園』のタマさんと同じ役者さんがちょい役ででていたのは嬉しい。唐[王其]さん、なかなか気になる女優さんです。
原作が気になるところですが、字幕付きで全3回と短いため、まずは原作よまずにドラマで話の流れを追うつもり。BS導入した甲斐がありました。

地上波『流星花園』は第7話。旭の見所満載の回です。美容院で意味なく踊っていたりする。ラストシーンは「流星花園」の中でも名場面なんではないでしょうか?
類はいませんでしたが、日本映画版を見てから思うに、台湾ドラマ版が成功した鍵は、やっぱ美作と西門ですわ。今回出番が少なかったのに、この二人と旭のシーンは印象に残るのです。微妙な位地にいるヴァネとKenちゃんですが、存在感があるのです。
F4迷というのは、基本的に『流星花園』迷なのでしょう。現在では単独で活動している彼らに、どこかに『流星花園』とF4を求める。日本では放映がかなり遅かったんで、多くの迷にはタイムラグが生じているわけですが、この状態を面白がるのも楽しみ方の一つではないかと。

借り物の椎名林檎の『下克上エクスタシー』DVDかけながら昼寝。パフォーマンスを楽しむべき音楽。ヴォーカルとせっかくの歌詞がサウンドに埋もれてしまうのが、狙っているのではあろうけど、聞きづらい。
なにがあたるかわからない世の中において、先駆者になるのは希なこと。仕掛ける裏方と舞台に上がる者と、両者に寝食忘れるほどの熱意があるとき、流行ができるのかもしれない、と思ったり。
posted by 夏居 at 03:11| Comment(1) | F4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月12日

『日記-「ヘブン・アンド・アース」中国滞在録』ひょっとすると映画よりも面白い撮影日記

アジアの映画やらドラマやらに、日本の役者が出演するのは珍しいことではなくなっている。『ヘブン アンド アース (天地英雄)』には中井貴一が準主役で出演していた。
中井貴一といえば、最近ノースウエスト航空の機内誌にでてたのを思い出す。オレゴンはすばらしい、というテーマのえらく気障な記事であった。結婚してどうのこうの、ってのろけまくってるし。質のいい売れ筋の映画やドラマに多数でている、騒がれすぎることもなくてそこそこ売れてる順風満帆な二枚目二世俳優という認識は、たぶん一般的なものだろう。

が、『ヘブン アンド アース (天地英雄)』では中国人のスタッフ、キャストの間に日本人一人放り込まれて、かなり苦労したらしい。
中井貴一は撮影当時の日記を軸にした体験記を著している。映画の撮影過程、本人の焦燥感、中国人キャストやスタッフの様子が記録されている。秘密主義の監督への不信感とか、主演女優のヴィッキー・チャオがおこした騒動とか、中国側の関係者には読めないから書けるんだろう、というような裏事情満載。
内容の面白さもさることながら、過酷な環境であっても自分の役をやりとげるのがプロの俳優である、というわけで中井貴一を見直したのであった。タレント本の枠にとどまらず、一体験記として読める内容の濃い本である。

日本の役者が他のアジア各国の映画やドラマに出演すること、最前線にいる当事者にとってはまだまだ大変なことのようだ。言葉の問題は大きい。さらに国によるやり方のちがい、というのがあるわけで、でもそれを乗り越えようとする過渡期が現在であるわけで、なかなかよい時代を共有している、といえる。今は日本の役者が他の国の作品に出演する場合が多いが、そのうちアジア各国の役者が、日本の作品で活躍することが多くなるかもしれない、と思うとなかなか楽しい。

『ヘブン アンド アース (天地英雄)』(2004年 2月)は中国歴史物大作映画である。主役をはっているのはヂァン・ウェン(姜文)おじさん。力作であるが、最近この手の映画、多いのである。ポイントは、やっぱり日本人が準主役で出ずっぱりのところか。


『日記-「ヘブン・アンド・アース」中国滞在録』
中井貴一 著 キネマ旬報社 2004年2月  1575円 
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2004年11月11日

『錦繍前程』(レオン・カーファイの恋はあせらず)

日本のDVDには『レスリー・チャンの恋はあせらず』とすごいタイトルがついているが、中国語タイトルは『錦繍前程』である。レスリー・チャンとレオン・カーファイの友情コメディで、レスリーは嘘つきサラリーマン、カーファイは老人ホームでバイトする音楽家志望青年なのである。ほかにロザムンド・クヮン、マイケル・ウォン、ウォン・ジーワーらが出演している。日本ではカーファイよりもレスリーのほうが知名度が高くファンも多いため、こんな邦題がついてしまったのであろう。

ストーリーはわかりやすい。背広に眼鏡のレスリー扮するロンが会社をクビになって女にも振られて、カーファイ扮するホイら友人たちに迷惑をかけまくる。ロンもホイも友人たちもお金持ちではなさそうだけど、友達がいて気ままに生きていて、楽しそうでよろしい。ロンもホイもダメ男っぽいけど憎めない。

カーファイがのびのびしていてよろしい。カーファイってエラがはってて好みが分かれる顔立ちをしているが、ガタイがよくって個性的なんである。心優しいフリーター役がはまっている。気どりのない役柄だが、カーファイ演じるが故、優しい大人の男でもあったりする。
対して、ずっと背広姿のレスリーである。しかし、レスリーに庶民的な役柄、似合うとは思えないんだが如何だろうか。もっとも、迷にとっては「かわいい~」といったところかもしれないが。私もレスリーとなるとちょっと平静ではいられなくなる口だが、うむ。ま、こういうレスリーもあり、か。
ちなみにレスリーは『恋戦 OKINAWA』といい、カーファイと組むと子供っぽくみえる。ええい、言ってしまえ、「とっつぁん坊や」と。カーファイが大人だから、というよりも監督の演出のせいか。『恋戦 OKINAWA』と同じ監督なのだった。

レスリーよりもカーファイをみる映画。日本では劇場未公開。土地転がしビジネス、老人ホームなどは香港ならではの設定であり、駄作ではないんだけど、映画としてはもう一ひねり、スパイスが欲しいところ。


『錦繍前程』
(監督:ゴードン・チャン 1994年 香港)
posted by 夏居 at 23:53| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年11月10日

『2046』について少々

いまさら『2046』なのであった。一回見ただけでどうこういえる作品ではないが、少々。
芸術性は高いことは誰しも認めるところであろうものの、好みがわかれる作品であることは間違いない。トニー・レオン扮する女遊びを得意とする文筆家が主人公なのはいいが、時間軸がやたらととぶから話がみえない。登場人物たちの評価も、観客ごとに異なるであろう。豪華キャストの抽象的な作品である。

王家衛作品を見続けてきて、王家衛的世界が好きな人にとっては好感が持てる作品だ。なにしろ『花様年華』『欲望の翼』『天使の涙』『恋する惑星』『ブエノスアイレス』あたりがごっちゃになったような映画である。冒頭のSFチックな映像には、そうきたか、と思わせられた。しかし中盤から後半にかけて、だれてくる。
女たちは美しい。特にアンドロイドになった女たち。SF映画ではよくある設定であるが、王家衛、ウィリアム・チョン、クリストファー・ドイル(本作品では撮影というより撮影監督らしい)ら『天使の涙』チームならではのアンドロイドっぷりである。カレン・モクのぶっとび金髪女が頭に浮かぶ。ただ、もっと各人の個性があってもいいのでないか。
好みは人それぞれだろうが、私の好みはフェイ・ウォン。歌手が本業であり演技にそれほど力をいれているとは思えない彼女だが、王家衛の映画にはその固さが妙にはまる。チャン・ツィイーは見所満載。かーりんのご登場は『欲望の翼』好きにはたまらない。コン・リーもさいごにでてくる。マギー・チャンはあくまでもゲスト。ドン・ジェは印象に残らなかった。豪華な顔ぶれであるが、チャン・ツィイーとドン・ジェの二人の若手以外はすでにこの監督の作品に出演済みなのであった。
男優陣は女優陣とくらべると、物足りない。トニーさんは、あちこちで褒められてるが、要はスケベ親父ではないか。余裕ありすぎと思うのは私だけか。キムラ氏は、面長で目の表情などがどことなくトニーさんに似ているが故に起用されたと思われる。チャン・チェンは、いたっけ? といった程度しかでていない。
王家衛もすっかり巨匠である。初期のころにあった青さはすっかり抜けてしまって、なんだかもう、一緒に歳とっていこうよ、といった感じの作品が続く。大陸の大家たちみたいに落ち着いてほしくはないんだが、仕方があるまい。次作もトニーさん主演らしいし。『2046』では、それなりに新しいものをとりいれようと、昔のロードムービーっぽい感覚をだそうと試みたんではないか、とも思える。

理由は何であれ、アジア圏の映画がつぎつぎと日本で注目を集めている。わるいこっちゃないだろう。カンヌの権威に弱いんでも話題先行でもよかろう。


『2046』
(監督:ウォン・カーウァイ 2004年 香港)
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2004年11月09日

惣領冬実の『MARS』

F4迷の間で話題の、仔仔主演の台湾ドラマ『戦神(MARS)』の原作となるマンガである。強烈なおすすめがあり、全15巻一気に読んだ。第15巻は出版社にも在庫がないとかで、マンガ喫茶にて。

単行本表紙をひんぱんに飾っているのが主人公の零。不良っぽくていい男でプロとして通用するバイクレーサーでもある彼と、やや陰気で絵の才能がある女の子キラの恋物語。二人は高校生で、零を好きな女やキラを好きな男がでてきて、そして話が進むにつれてやがて、、、と少女マンガの王道をいく物語なのであった。対象年齢は中学生~高校生か。
バイクシーンはとても魅力的なのだが、それよりも主人公二人が抱き合ったりいちゃいちゃしているシーンのほうが印象的だったりする。惣領冬実の絵柄は甘く、この作家らしいザ・少女マンガの世界を築く。
双子、精神的な傷、複雑な家庭環境などが、上手にとりいれられているものの、これらにコマの外までにじみでるほどの重さはない。主題にするにはあまりにも正面から描きすぎているためであろう。ラブストーリーとして素直に読むべき作品であり、それ以上の深みを求めるにはもの足りない。伏線のはり方、だんだんと主人公たちのバックグラウンドが明らかになっていく話の進め方はわかりやすい。主題ではないものの、これらは読み出したらやめられない力を作品に与えている。

ドラマティックな素材を扱いながらその重さがないぶん、実写化版には期待ができる。台湾ドラマの動画を見る限りでは重厚感があり、仔仔扮する零は原作通りの恵まれた体躯・長髪のいい男で全く違和感がない。まさか、これで高校生という設定ではないと思うが。
台湾ではこのドラマ、このたび放映終了した模様。日本でもDVDなど入手すれば見えるのだが、未見。BS日テレが字幕をつけて放映してくれるのを待つか、どうするか。
posted by 夏居 at 23:18| Comment(2) | 単行本・マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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