ここんところ、日本の国営放送が深刻な現代日本の問題点をとりあげた番組を放映している。
まずは「ワーキングプア」を扱ったドキュメンタリー。取り上げられているのは、30代半ばと50代の都市生活者、東北地方の農家に商店主。真面目・実直な市井の人々なんであるが、食っていくのがやっとなんである。それから福祉施設の子供たち。さまざまな考え方の学者のコメントもあり。
簡単に論じることは、非常に難しい。が、まず現実として日本に明らかな貧困層にあたる人々が少なからずいることは認識しなければならない。
20年くらい前とは社会のシステムが明らかにかわっている。取り上げられていた「ワーキングプア」と呼ばれる人々はそれに伴う変化についていけなかった者、振り落とされた者といえる。競争型となり経済にいっそう価値をおくようになった社会なんであるが、市井の人間としてはその良し悪しやらについてあれこれいう前に生き延びていかねばならないのも現実である。ひとごとでは決してない。また子供や若者に対して、対応能力を身につけさせることは社会や大人の仕事である。
さらにもう1本、「女性のうつ病」特集のドキュメンタリー。番組のつくりかたは「ワーキングプア」と同じでうつ病に苦しむさまざまな人々の日常の映像とスタジオからのコメントで構成されていた。うつ病も、社会システムの変化と密接に関係している。うつ病は自殺につながる。うつ病の患者も貧困層の人々と同じく、その原因を個人の弱さだけとするのではなく、社会構造や環境についてもより考察していき対策を議論する必要がある。またこれだけ一般的な病気になってくると、自分の場合、家族の場合、知人・友人の場合と、一人ひとりが対応していかねばならない。これまたひとごとでは決してない。現に周りにうつで治療をうけている知人・友人が何人かいるわけであるが。
「ワーキングプア」にしても「うつ病」にしても、自己責任のひとことでそのままほっとくと社会を構成する市井の人々がすさんで国が破綻する。また、自分がその立場にならんとも限らない。今のところ経済的にそこそこやっていける立場にある者でも、リスクへの対応は頭においておくべき社会なのではなかろうか。