ここで妻はピュリッツアー賞作家のシルヴィア・プラス、夫は桂冠詩人テッド・ヒューズ。文才が認められた美男美女だから、始末に悪くて映画になってしまったりする。
シルヴィアの生年は1932年。1963年にオーブンに頭をつっこんでガス自殺している。世に認められた夫と二人の子供とイギリスの田舎での生活、なんてのに満足できないところが創造の原動力になっているわけなんだけど、作品が認められたのは死後のこと。映画から読みとれる物語からは、彼女が生前幸福感を感じていたのはほんのわずかな時間であったとしか思えない。
「常に自分が不満なの」ってところから生み出される作品は人々の心を動かす力を持つ。が、常に満たされないものをかかえている当人は疲弊する。そうやって自分を世に問いかけている人ってのは、有名無名および手段を問わず実に沢山いる。映画になるまでの作品を残すようならば、端から見ていてまだ救いがあるが、たどり着く以前に倒れてしまう人も大勢いる。
そのへん実生活でそれなりにみているうちに、凡庸でも手の届く範囲で問うていきたいと思うようになったのは年を経て人間丸くなったということか、と個人的感慨を少々。
主演はグウィネス・パルトロウ。シルヴィアの学生時代はどこがいいのかよくわかんないが、結婚後の狂気がはいる時代ではぐっと魅力を増して美しくなる。嫉妬にまみれて客をもてなしたり、編集者を誘惑しようとしたり、アパートの管理人に父親を求めてみたりの変化ぶりが様になっている。にもかかわらず、作品として今ひとつこぢんまりとした印象なのは、芸術家としての姿よりも結婚生活に悩む普通の女の姿を強調した脚本のためか。
ここのところ欧米系映画では女性伝記ものが目につく。思い当たるだけでも『ヴェロニカ・ゲリン』、『フリーダ』、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』など。主演女優の熱演故の佳作が多い。
『シルヴィア』
監督:クリスティン・ジェフズ (2003年 イギリス・アメリカ)
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