さて、特別招待作品の『カンフー・ハッスル』、来年早々に日本でも劇場公開するということで、無理してみることもないかなぁ、と思った。が、周星馳の舞台挨拶つきというんで、一般発売初日にチケット確保。3分で完売というニュースがでてましたが、そこまででもなかったような。
文化革命前の中国。どことなく『上海灘』を思い出させる街並みや、かの九龍城を連想させる雑居アパートが舞台となるが、セットがどことなく安っぽいのが、らしくてよろしい。
ストーリーの詳細は、これから観る人がいらっしゃることなので、省略する。はじまってしばらくは地味でややたるいが、後半は星馳節が炸裂する。派手なアクションと馬鹿馬鹿しい特撮のてんこ盛り、脇にはほろっとさせられる清楚なラブストーリー。単純に、楽しめて、あとに残らない。お子様にも安心して勧められる。
主演なのに星馳の出番が少なかったのは、たぶん俳優よりも監督や脚本、制作に集中したかったためと思われる。ナンセンス・カンフー映画なので、日本でも一般うけすることは間違いないが、俳優・周星馳が動いているのをみるのが好きな迷には、物足りないかもしれない。
舞台挨拶の周星馳は、監督・周星馳だった。3階からも、緊張していることがわかった。受け答えも実直で真面目。「これからも皆さんの期待に応える作品をつくっていきたい」とか謙虚なのだ。サービス精神は言葉ではなく、大勢が舞台にならんでパフォーマンスをやることと衣装で発揮。スクリーンの中で広東語を早口でまくしたてて表情豊かに馬鹿やって人をこづいたりしている、よく見るとかなりの男前の周星馳とは異なった。役者がスクリーンで演じる姿って、やっぱり幻影なのである。司会のおねえさんは「かわいい」とかいってたが、立派なおじさまである。映画監督って、それも成功してしまった監督って、大変なのねぇ。
日本で香港映画というとカンフーや少林寺をテーマにしたものが大きく取り上げられて大手の配給ルートにのる。動きが派手なのと、従来のイメージに沿ったものだからだろう。周星馳の作品でも『食神』など、日本でも公開されているのだが、『少林サッカー』ほど大々的に取り上げられなかった。言葉の細部がわからなくったって十分面白いのになぁ。その点、『カンフー・ハッスル』は売れ線をハズしていない。
私は3階席で鑑賞したが、2階、3階とも空席がけっこうあった。足下も悪いことだしチケットとったもののいかなかった人もいるのだろうが、勿体ない。観たくても観れなかった人も大勢いたと思われるのに。スクリーンがみにくくなるためわざと人をいれてない席もあるのかもしれないが、舞台挨拶つきだったら、なおのこと、見たい人は一人でも見えるようにしたほうがよいように思えるのは素人考えか。
会場が六本木と渋谷にわかれていること、ちらちらと人様のBLOGをみると不評である。六本木ヒルズ、会場の雰囲気としてはいいのだが。JRや地下鉄だと渋谷と六本木は行き来しにくい。車で移動する分には近くて便利。六本木ヒルズー渋谷間はバスが運行しているのだが、これは無料配布しているパンフレットに大きく書かないと気がつかない人もいるかもしれない。
東京国際映画祭は、一般にも大きく宣伝しているにもかかわらず、マスコミや映画関係者以外の観客に対しては、残念ながらちょっと冷たいんではないか、と思ったりもする。チケットがとりにくかったり、行ってみれば空席があったりということも含めて。映画でごはんを食べている人中心なのは当然とはいうものの、大々的な広報からつい運営にまで期待しすぎてしまう普通の映画好きとしてはやや寂しい。チケットの値段は良心的だし、内容的にはラインナップはいいし豪華ゲストを生で見ることができたりして、文句ないのだが。
『カンフー・ハッスル』
監督:周星馳(香港 2004年)